2018年5月14日月曜日

藤子アニメ、ファンタジー・ワールドの住人たち

アニメージュ1980年9月号(p78-79)

藤子アニメ、ファンタジー・ワールドの住人たち<解説>
「オバケのQ太郎」「パーマン」「怪物くん」「ウメ星デンカ」「ジャングル黒べえ」「ドラえもん」の設定・主人公・家族・仲間・その他、ライバルを一覧表にした見開き2ページに下欄に掲載された解説です。
 スキャン画像では読みづらいので、打ち直しました。

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藤子不二雄の原作をもとに作られた「オバケのQ太郎」「パーマン」「怪物くん」「ウメ星デンカ」「ジャングル黒べえ」「ドラえもん」ーーーそのアニメ作品をきみが単なるギャグアニメとしてしか見ないなら、それはとってももったいない見方だ。ギャグ・SF・ユーモア・ペーソス・涙ーーーそのすべてが満ちあふれる作品、それが藤子作品のアニメ群なのだ。

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 一般に藤子アニメは、SFとギャグ漫画の合体した作品として(あるいは単なるギャグアニメとして)片付けられている。

 しかし、SF、ギャグと言う以前にその根底を流れるのが『友情』と言うテーマなのである。
 藤子アニメの共通点は、2人の主人公の1人が必ず異世界からやってきた友だちだということだ。1人が人間でないにもかかわらず、2人は意気投合し、たちまち親友となるのである。

 子供向け作品であるがゆえに説得力を持つこの展開は、藤子アニメの力強いテーマの1つである。

『ダレでも友達になれるんだ!』

 これこそ、作者の希望ともいうメッセージではないだろうか。
 友が出会い、ともに遊び、笑い、泣き、怒り……そして、やがて別れていく。藤子アニメは、その主人公2人を通して『私たちの人生』を描き続けているのだ……。

 こう書いても、藤子アニメがギャグと笑い、言い方を変えれば『人間て、なんてたのしくて馬鹿なやつなんだろう』と言う逆サイドからの人間讃歌であることにはまちがいはない。藤子アニメを支えるものーーーそれは、見て面白く、後味がさわやかで、たのしく現代的な漫画と言う原作者・藤子不二雄の目指す方向性なのだろう。

 異世界からきたぼくのとってもたのしい仲間ーーー藤子アニメは、その設定が描く『夢』の部分が作品の大きな力になっているのだ。

 SFとギャグの両方の発想が藤子アニメを事実上作っているわけだが、この発想を形作るのが『逆転』の発想である。

 オバQはこわくないおばけ、パーマンはカッコよくないスーパーマン、ウメ星デンカはのんきな宇宙人、ドラえもんはネズミがきらいなネコ型ロボット…とまるでキャラクターが設定と逆で、その一挙一動が物語に笑いを生み出す。

 対象をいろいろな角度やわざと逆から描く『遊びの心」『おもしろがる心』が、そのキャラクターを生み出しているのだ。

 藤子作品がしばしばアニメにとりあげられるのは、以下の理由だろう。そのキャラクターのかわいらしさ、発想の面白さ、作品のバラエティーさと明るさ、作品に常に流れている現代感覚、短編としてTVアニメに適したその長さーーーいずれも現在では、藤子作品のみが持つ少年マンガの典型的長所なのである。


以上

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